会計離れが進んでいるとも言われますが、経理で働く人の中には、簿記を勉強する方も多いのではないでしょうか。
キリオは、経理として簿記を勉強することは、いろいろな意味で良いことと考えています。
キリオは、簿記の「ぼ」の字も知らないまま、学生時代の終わりにたまたま簿記に出会い、日商簿記2級を取得しました。
簿記については、【簿記のススメ】仕事だけでなく、いろいろ役に立つ絶対損がない資格 こちらで
簿記に目覚め(?)、かなり遠回りをし社会人で日商簿記1級に合格しました。
しかし、20代の貴重な時間のかなりを簿記の勉強に費やしてしまった反省があります。
日商簿記1級への合格は難しいとはいえ、もっと効率的な勉強方法があります。
この記事では、キリオと同じように日商簿記1級を目指しながら、合格できず悶々とされている方、あるいは、日商簿記1級とはどのような資格なのか興味がある方に向け、どうすれば成果を出しやすいか、ヒントをお伝えできればと思います。
この記事を読んでわかること
- 日商簿記1級試験についての概要
- 日商簿記1級を勉強するメリット
- 日商簿記1級の合格に近づくための効果的な努力
先に結論を申しますと、日商簿記1級合格に近づくための成果をあげる努力は、次のとおりです。
- スクール(専門学校)に通い、自習室を活用すること(※)
- 主要な論点については、できるだけ簡単に図でさっと書いて自分自身に説明できるようにすること
- 問題集より過去問を繰り返し行うこと
(※)コロナウィルスの影響もあり、利用が難しい場合もあります。自習室の利用にあたっては専門学校のルールにしたがうなどご注意ください。
日商簿記1級に合格するまでに失敗だったこと
日商簿記1級の勉強は、一生の宝となりとても良い経験でした。
一方で、キリオは、合格するまでの時間がかかりすぎてしまい、20代の貴重な時間のかなりを簿記1級の勉強に費やしてしまった…という反省もあります。
自己投資だったとはいえ、相当の時間とお金を使いました。
言い訳をすれば、20代は仕事が忙しく、毎日21時22時まで残業が続き、休日出勤もあり、勉強時間が十分に取れない日々が続きました。挫折して、途中、一時中断する期間も長かったです。
当時、簿記1級のボリューム感は、2級と比べ、質・量とも3倍ちかくあるように感じました。
決して要領が良い方ではありませんので、あたかも日商簿記1級の深いプールにはまってしまい泳げず、毎日アップアップでした…。
さらに、工業簿記・原価計算が得意という人は多いですが、キリオは、工業簿記・原価計算が本番で強くはありませんでした。
特に、試験の緊張で問題文が難解に感じると、まったく頭に入りません。頭が真っ白になり、パニック状態でした。
日商簿記1級とはどのような試験か?
試験概要
日商簿記1級の試験は、毎年6月と11月の年2回、日本商工会議所が実施しています。
日本商工会議所のホームページによると、概要の説明は次のとおりです。
極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。
合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。
また、「商業簿記」と「工業簿記」のそれぞれの説明は、以下のとおりです。
「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
「工業簿記」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識です。
科目数と試験時間
試験科目は、「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」の4科目で、「商業簿記・会計学」「工業簿記・原価計算」がセットで、試験時間はそれぞれ90分です。
先に「商業簿記・会計学」を行い、その後、「工業簿記・原価計算」が行われます。
試験時間は90分と聞くと長いようにも感じられますが、息をする間もないくらい忙しい印象です。
合格点
合格基準は、基本的に70%以上であり、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の25点ずつ配点されます。
100点満点ですが、各科目40%以下は不合格となります。つまり、各科目10点を下回ってはいけません。
また、日商簿記1級は「傾斜配点」があり、合否のかく乱要因となります。
傾斜配点とは、問題ができたから得点という絶対評価とはならず、受験者全体の出来を判断して配点を調整する仕組みです。
点数全体では70点以上を達したものの、傾斜配点の影響なのか、原価計算で10点を下回り、泣く泣く不合格となったことがあります。
合格率
合格率は、おおむね10%前後で、合格者数は毎回1,000人前後といわれます。
一部の会計士が力試しに受験していると言われ、合格者の中には一定の会計士資格保有者が含まれ、実態の合格率はもう少し低いとも言われます。
勉強時間
合格までの勉強時間は、様々に言われますが、一般に800~2000時間の勉強時間が必要と言われます。
キリオの場合、仕事が忙しく、途中で挫折して勉強をお休みしたこともあり、通算で約5年ちかくの時間を費やしました…。
日商簿記1級を取得するメリット
試験の概要を説明しましたが、ハードルの高さでマイナスの印象を抱かれたかもしれません…。
しかし、試験のハードルを考えると、日商簿記1級を取得する意味があるのか?と感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に若い方ならば、日商簿記1級を取得するメリットは十分あると、キリオは考えています。
- 就職・転職に有利になります。
- 日商簿記1級をもっていると一目おかれます。
- 簿記を通じ、会計がよく理解ができるようになります。
就職・転職に有利です
就職・転職に有利であることは言うまでもありません。
転職にはキャリアも必要でしょうが、キリオは、転職2回の3社目ですが、日商簿記1級を取得しているためか、それほど苦労を感じていません。
一目おかれます
一目おかれるようになるのも細かな説明は必要ないかもしれません。経理で働く人は、日商簿記試験の資格を取得している人が多いかと思いますが、1級まで取得している人は多くはありません。
やはり、取得にはそれなりの努力が必要なため、一目をおかれるようになります。
簿記を通じ、会計がよく理解できるようになります
必ずしも「簿記=会計」ではないかもしれませんが、簿記を通じ、会計のかなりの部分を理解できるようになります。
特に、日商簿記1級は、会計学で本質的な考え方を学びます。
会計学の知識があるかないかで、会計に対する理解が全然違ってきます。
海外の会計の勉強の仕方と比較する形で、日本式の「簿記」は、よく「体で覚える」方法であると強調されます。
日本式の簿記には、上の級にいくとようやく下の級の意味が理解できる性質があります。
3級・2級で本質的な理解がないまま論点が進みますが、会計学を学ぶことによって、ああ、このためにこの会計処理を行うのだと、よくわかるようになる経験をするはずです。
しかし、キリオは体で覚えていく日本式の簿記が、決して悪いとは思いません。
物事の理屈は後からついてくるとも言われますが、技術の習得には、最初はよく分からなくとも体で反復して覚えることで、理解が後からついてくることは往々にしてあるのではないでしょうか。また、体で覚えた物事の方が、その後の定着が良いようにも思います。
最初から理論を学んでも、その場は納得して分かったつもりになりますが、結局、あとには何も残らないことは、よくある話ではないでしょうか。
さらに、会計基準等は、改正で日々アップデートされ、キャッチアップが必要です。
しかし、会計学の考え方を理解しておけば、根底にある本質的な考え方は変わりませんので、改正でルールが変わろうと左程驚くことは少なくなります。
日商簿記1級合格に近づくために行うべきこと
日商簿記1級を取得するメリットについて説明してきましたが、合格するためにはどのような勉強や努力が必要でしょうか。
- 簿記のスクール(専門学校)に通学する
- 主な論点についての理解を簡単な図で書けるようにする
- 問題集より過去問を繰り返し行う
簿記のスクールに通学する
過去に、知り合いで、独学で日商簿記1級に一発合格した人がいましたが、極めてマレな話かと思います。キリオ自身は、独学は厳しいと考えています。
日商簿記1級を取得にはそれ相応の勉強時間が必要ですし、仕事や家事などもあれば、満足のいく勉強時間の確保は困難です。
週末は疲れやリフレッシュしたいという誘惑も生まれることから、ある程度、強制力のある環境を整える必要があります。
簿記の専門学校に通学することで、勉強する環境を作ることはとても大切です。
また、専門学校には自習室もあると思いますので、ぜひ積極的に活用しましょう。
1週間のうち2~3時間でも良いから、自習室で集中的に勉強する時間を確保しましょう。
主な論点についての理解を簡単に書けるようにする
日商簿記1級の範囲は2級に比べるとかなり広く、細かい論点にまで及びます。
細かな論点を取りこぼさずひとつひとつおさえることも必要ですが、大きなテーマや全体としての論点をざっくり理解しておくことも必要です。自分が理解していることを短い時間でひとつの図で書けるようにしておくことが有効です。
特に、簿記は図的に表現したり、ボックス図で説明しますので、要するに、この論点は何が言いたいのか、ポイントをさっと短い時間で書き表せられるようにすることが重要です。
短い時間で論点や注意点について簡単に図で自分自身に説明できるようにすることが、理解を定着化させる早道です。
問題集より過去問を繰り返し行う
過去問を繰り返すことは、言うまでもなく、受験勉強での鉄則でしょう。
肌感覚ですが、日商簿記1級の出題範囲は、2級に比べ3倍ちかくあるように感じます。
また、専門学校に通うとどうしても練習問題を中心に解くことが求められます。
授業の進展も早く、追いつくだけでも最初はやっとであり、練習問題を消化していくのは大変だと思います。
しかし、勉強時間がなかなか確保できない環境の中で、練習問題だけを繰り替えてしても、前に覚えたことは次々と忘れていきます。練習問題を繰り返すことは、なかなか効率的ではありません。
また、実際の試験は、総合問題で出題されますので、練習問題で出るような個別の論点がそのまま出題されることはありません。
ですので、一通り練習問題を解き終えたならば、できるだけ早く過去問を解く練習に切り替えるべきです。
結局、出題範囲が広い日商簿記1級であっても、過去問で出題される部分をできるようにしておけば、確実に合格圏内に近づけます。
過去問だけやっていては、過去問で出題されないような問題が出た場合どうするのか?という疑問も出るかもしれません。
しかし、仮に過去問で出題される範囲以外で出題されたとしても、大半の受験者は解答できません。
大半の受験者が解けない問題を解けたとして、得点につながることはほとんどありません。
それよりも、過去問で出る範囲の問題を間違えず確実にできるようにしておくことの方が、大切です。
過去問を繰り返す効果は、実戦に近い問題に馴れることにつながりますし、原価計算のような難解で毎回一見出題がいつもと違っていて、どうアプローチしたらよいのかよく分からない、取り付く島もない問題が出たとしても効果を発揮します。
過去問を解けるようになれば、根底に流れる考え方やパターンが見えてきます。
仮に原価計算のような難解な問題が出てどうしたらよいのか分からなかったとしても、過去問のパターンで考えれば、「あ、たぶん、訳わからないけどたぶんこのような解き方で解けるはず!」というカンが働くようになります。
キリオが実際に合格した時は、原価計算の問題は訳がわかりませんでしたが、カンが働くようになりました。
キリオは過去問を繰り返して解くという方法で、苦手な工業簿記・原価計算を克服することができました。
過去問を繰り返すことは、「合格の秘訣」といっても過言ではありません。
「日商簿記1級の合格に近づくためのコツと勉強方法」についてのまとめ
この記事では、日商簿記1級取得を志しているけれど、なかなか合格できず悩まれている方、また、日商簿記1級の試験に興味がある方に向けて、試験に合格するためのコツをお話してまいりました。
日商簿記1級への合格は、ある程度努力が必要ですので、正直決してラクとは言えません。
しかし、以下のような努力をしていけば、効率的に成果をだすことができます。
すなわち、
- スクールに通い、自習室を活用すること
- 主要な論点については、できるだけ簡単に図でさっと書いて、自分自身に説明できるようにすること
- 問題集より過去問を繰り返し行うこと
です。
キリオ自身、日商簿記1級に合格するまでかなり遠回りをしましたが、仮に不合格であったとしても、簿記1級を勉強した経験は、会計をよりよく理解することになり、人生を変えたと思っています。
もし、会計を詳しく知りたい方は、日商簿記1級合格にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。