決算をスムーズに行うにはどうすべきか。いつもズルズルして、なかなか数字が締まらない…。決算の進捗状況を把握できない。日頃、頭を抱えられている経理のマネージャーもいらっしゃるのではないでしょうか。
経理がシステム化がされていない…。非効率なやり方が続いている…。担当者に問題がある…。
上記の悩みは、決算を遅くする要因と考えられます。「システムの整備」「コンサルタントによる業務の見直し」「担当者の採用」も重要です。
確かにお金をかけることで決算早期化を図っていくことは、一理あることでしょう。
しかし、まずお金をかける前にやらなければならないことがあるとキリオは考えています。
やらなければならない事とは何でしょうかか?
まず決算を構成するタスクひとつひとつに適切な「名前をつける」ことです。
この記事では、決算を少しでもスムーズに進めるヒントとして、「タスクに名前をつける」重要性についてご紹介できればと思います。
そして、「タスクに名前をつける」は、いわゆるプロジェクトマネジメント以前の話かもしれませんが、決算に限らず、他の様々なプロジェクト的に進める仕事などにも通じる考え方といえます。
「タスクに名前をつける」を是非ご参考にして頂ければ幸いです。
決算の「タスク」をできる限り洗い出し、適切な「呼び名(名前)」を付けましょう。
決算の遅れはタスクに名前が付いていないことから起きる
お金をかける前にまずやることがある
システム化がされていない…。非効率なやり方が続いている…。担当者に問題がある…。これらの悩みは、決算を遅くする要因と考えられます。
しかし、お金をかけるだけのシステム化や、メンバーの能力不足等を採用や人員増加等でカバーすれば、決算業務がスムーズに流れるのでしょうか?
個人的な経験でしか申せませんが、キリオは懐疑的です。決算が遅れる要因は、タスクとタスクがスムーズに連携していないからであり、必ずしもシステムや人固有の問題とは関係がありません。
決算の遅れはタスクが連携せずスムーズに流れないため
タスク同士がきちんと連携しないのは、「タスク」自体に適切な呼び名(名前)が付いていないため、タスク間の関係性が明確にされていないのが原因だからです。
例えば、「呼び名(名前)」がないため、担当者自身が認識できない。あるいは、名前がないことから重要性が低く守備範囲があいまいとなり、結果として、誰も手をつけないまま放置され、仕事の連携が悪く滞ってしまう…。
「呼び名」がないため、仕事が放置されてしまうようなことに心当りはないでしょうか?
業務の効率化やシステム化の検討はもちろん重要です。
しかし、まず、業務(タスク)に網羅的に「呼び名(名前)」を付けていくことが肝要です。
タスクと「名前のない家事」
ところで、「名前のない家事」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
名前のない家事は、読んで字のごとく、“いちいち名前がつけられていない細々とした家事”を意味します。
例えば、掃除は「掃除」という「呼び名(名前)」がつけられています。
しかし、その掃除の中身や背後には、「掃除機のフィルター掃除」「紙パックや床拭き用シートの交換」と「ストック補充」など、ひとつひとつは明確に一般的な名づけがされていないような細かい家事が潜んでいます。
夫婦の家事負担を考える際、夫は、名前のある家事だけを家事と考えがちで、妻が名前のない家事に多くの時間を費やされていることに意識が向かない傾向もあるようです。
名前のない家事を認識するか否かで、夫婦間の家事の負担割合やパフォーマンスの違いが出るとも言われます。
タスクに名前が付けられて、タスクは存在する
タスクに名前が必要な理由
なぜタスクに「呼び名(名前)」を付ける必要があるのでしょうか?
タスク名が必要な理由は、そのものに名前がなければ、タスクが意識されないからです。
つまり、人は言葉を用い物事を考えますが、そのものの言葉や概念について「呼び名(名前)」がなければ、認識できません。
例えば、欧米人には「肩こり」がないと言われます。肩がこらない理由は、「肩こり」に相当する概念(言葉)が欧米には元々ないからです。
しかし、欧米人も「肩がこるとはどういうことか」「肩こり」という名前が意識された瞬間、急に肩こりを感じ始めると言います。
そのものの呼び名(名前)がなければ、物事を認識できない例ではないでしょうか。
繰り返しですが、「呼び名(名前)」がない以上、メンバー間でタスクは共有されません。
つまり、タスクに「呼び名(名前)」がなければ、職場では「仕事(タスク)」が存在しないことと同じ意味なのです。
また、「呼び名(名前)」がない業務が多いほど、担当者の中だけで完結しますので、業務の「属人化」にも繋がります。
全員が同じでないからこそタスクの「名前」が必要
ところで、今までなら、あえて言わなくとも通じる。いわば、阿吽の呼吸のような共通認識が職場では自然に醸成されていたのかもしれません。
しかし、職場に転職者など同じバックボーンを共有しない部外者が増えれば、言わなくとも通じる、当たり前は通用しません。今まで当たり前と思っていた当たり前が通じない職場は、全員が同じ認識や考えで行動はしません。
また、個人で完結する仕事ならともかく、メンバーと連携しチームワークが求められる中で、コミュニケーションは重要です。
物事の「呼び名(名前)」とは、コミュニケーションの要であり、「呼び名(名前)」がない状態は、コミュニケーションが成り立ちません。
コミュニケーションが成り立たなければ、職場の中ではタスクそのものが存在しないことになります。タスクが存在しなければ、タスクの進捗管理もできません。「言わなくとも分かる」「あたりまえだろう」という「思い込み」は「甘え」です。
特に、仕事は、たとえ自分には当たり前でも、明確に言葉で分かるよう伝えなければ、相手には伝わらないという前提でいるべきです。
タスクをできるかぎり洗い出す
タスクが特定の人の頭の中だけにあって、他のメンバーにも共有されるように言語化されていなければ、協同して行う仕事としては意味がありません。
特定の人にとっての当たり前は、名前と言葉によって周囲に共有化されなければ、当たり前ではないのです。
コミュニケーションを円滑にするために名前付けを行うポイントは、できる限り網羅的に具体的なレベルでタスクを洗い出し、適切な内容が理解できるよう「呼び名(名前)」を持たせることです。
タスクの分解の考え方や留意する点は、下記の記事もご参照ください。
名前のない家事に例えるならば、「掃除」という大分類にとどまらず、可能な限り、掃除を支える様々な具体的なタスクについて、落とし込み、相手と共有していくことが鍵となります。
例えば、掃除ならば、単なる「掃除」を超えて、「掃除機のフィルター掃除」「紙パックや床拭き用シートの交換」と「ストック補充」といった具体レベルで「呼び名(名前)」を明確にしましょう。
もしマネージャーが自分一人だけでタスクを洗い出すのが難しい場合は、メンバーの各担当者に協力を仰ぎながら、できる限り、現状のタスクに何があるか書き出してもらうことも得策でしょう。
洗い出したタスクに適切な「名前」をつける
例えば、業務が属人化していているため、マネージャーや他のメンバーがタスク自体を認識していないことがあるかもしれません。担当者に聞いてみると、「そんなことをやっていたの?」と驚かされることもあります。
また、重要なタスクであっても、当たり前すぎて、そもそものタスクの「呼び名(名前)」が意識されていないようなこともあるでしょう。特に、転職者などの部外者には、見えにくいところとなります。
決算を早期化したいと考えるマネージャーが行うべき第一は、タスクをできるだけ網羅的に洗い出し、適切な具体名「呼び名(名前)」付けを行いながら、メンバーの認識を合わせ、理解を図ることが重要といえます。
「【決算早期化】コツとヒント 全てのタスクに名前をつける」のまとめ
決算の早期化には、業務効率化やシステム化や仕組みを考えがちです。それ自体は重要なことです。
しかし、業務効率化やシステム化の以前の問題として、まずはタスクに具体的な適切な「呼び名(名前)」をつけることを意識するのはいかがでしょうか。
「タスク」を洗い出し、メンバー間で共有できるような、適切な「呼び名(名前)」を付けましょう。
名前さえ与えられれば、タスクが全体の中で位置づけられ、メンバーの認識が合ってきます。結果として、不思議と業務の効率化につながってくるはずです。
まずは、タスクの名前付けから始めてみてはいかがでしょうか。