監査法人によると、2020年03月期の決算は、コロナウィルスの影響により各社で遅れたそうです。
その後、コロナウィルスの影響による混乱は続いてきましたが、翌年の2021年03月期では多くの会社の決算は遅れは見られませんでした。
キリオは現在、非上場の製造業の会社に勤めますが、恥ずかしながら2021年03月期の決算も大幅に遅れました。
決算が遅れた要因は、コロナウィルス感染防止に伴い在宅勤務が続いた混乱の他、重要な部分を担っている担当者の異動が影響したためです。
しかし、それ以上に大きな要因として決算の遅れは、そもそも会社が非上場である根源的な問題とキリオは考えています。
誤解して頂くたくないのは、非上場企業が良くないとか、上場企業より劣っていると言いたいのではありません。
しかし、上場企業は、四半期ごとに概ね45日以内で開示する要請がされており、決算を早くしないといけない圧力があります。
一方、非上場企業の場合、45日以内に決算を固めなければならない直接的なインセンティブは働きにくいでしょう。
なぜなら、決算を早めたところで、経理担当者にとっては残業が増える以外、何もメリットがないからです。人間はインセンティブがなければ動けませんので、致し方ないことではあります。
ところで、キリオは上司から決算を早くしなさいという指示を受けていますので、現在の状況を立て直すべく、奮闘しています。
非上場企業の決算早期化の難しさは、決算早期化のインセンティブがない中で行わなければなりません。
本記事は、前期末決算以来、キリオが決算早期化を進めるための具体的施策をまとめました。
決算早期化を実現したいけど、どう進めればよいか分からない。また、何をすべきかについて悩まれている。
決算を早めなければならないのは重々分かっているものの、自分一人では何とかなるものの、所詮他人にお願いして動いてもらわない以上、手の打ちようがないと感じられている方向けに、ご参考として共有してまいりたいと思います。
- メンバーに向けてアンケートを行い、一人ひとりにインタビューを実施
- タスクカードを用い、あらためてタスクの棚卸を行った
- 担当者で決算業務に偏りがあるため、負荷分散を検討した
- タスクカードを元に、スケジュールの最適化を検討
- スケジュール管理のツールとして、マイクロソフトPlannerを活用
メンバーに向けアンケートを行い、一人ひとりにインタビューを実施
2021年03月期決算の振り返りとして、マイクロソフトFormsでアンケートを作成し、メンバーにインタビューを行いました。
決算の振り返りは、全体でのミーティングによる反省会とせず、メンバーそれぞれにインタビューしていく形で行います。
まず、メンバーにアンケートに答えてもらいます。
アンケートの回答結果に対して、インタビューを実施しました。
ただし、インタビューは、個人の責任追及の場とならないよう、聞くことに徹する注意も必要です。
また、アンケートでの質問は、インタビューで聞きたいことにリーチできるような質問内容となるよう工夫しました。
なお、マイクロソフトFormsのアプリを用いれば、直感的に簡単にアンケートを作成できます。
タスクカードを用いて、あらためてタスクの棚卸を行った
決算業務の細部の項目は、すでに会社では明確化はされてはいました。
しかし、あらためてメンバーに決算業務におけるタスクカードを作成してもらい、決算業務の内容をできるだけ全て洗い出すようにしてもらいました。
タスクカード作成のキーワードは、「見える化」です。
特に、「完了基準」「前工程」「成果物」「作業時間目安」の4点を明確するようにしました。
完了基準、前工程、成果物、作業時間の観点から、メンバーにタスクカードを埋めてもらい、内容を確認します。
「完了基準」とは、タスクがどのような状態であれば完了と判断できるのかを意味します。
「前工程」は、前のタスクが終わらなければ本タスクを始められません。何のタスクが終わっていなければ自分のタスクが始められないのかを明確にするように努めました。
「成果物」とは、決算業務でのタスクが完了で、どのような帳票や資料ができるかを定義しました。成果物を管理者や他のメンバーが見てもわかるように明示しておきます。
「作業時間目安」は、タスクの工程にかかる時間です。時間を書いてもらうことで、担当者本人がどのくらいの時間でタスク終わらせられるのかを確認できるようにしました。
タスクカードが一旦完成しましたら、メンバー一人ひとりにタスクカードの内容の不明点等についてインタビューを行い、修正や肉付けを行いました。
担当者で決算業務に偏りがあるため、負荷分散を検討した
2021年3月決算は、決算の重要な部分を担っていた法人税の担当者が異動してしまい、業務を引き継いだ別の担当者の業務が偏りすぎ負担が増えた結果、全体の決算の進捗に影響しました。
法人税の計算は、社内や会計上の様々な資料を集め整理しなければなりません。
税金計算用のソフトを使うとはいえ、複雑で分かりやすくはありません。法人税の計算は、負荷と相当な時間がとられる重労働とえいます。
にもかかわらず、新しい法人税の計算の担当者は、税金計算以前の決算業務に忙殺され、必要な事前準備に時間が取れていませんでした。
2021年3月決算を終え、振り返りを行う中でメンバーごとの業務量の負担のあり方も検証しました。
担当者ごとの負担を検討し、実際に適している担当者に業務の引き継ぎを行ってもらいました。
タスクカードを元に、スケジュールの最適化を検討
従来の決算スケジュールの最適化を図り、中間決算スケジュールの見直しを行いました。計画の再調整を行い、無理のないスケジュールになるよう気を配りました。
特に、スケジュールを見直す上で、「アンケートとインタビューの結果」と「タスクカード」が役立ちました。
例えば、タスクカードで「前工程」「作業時間」をあらためて確認したところ、今までのスケジュールではどう考えても現実的に無理であろうという点も判明いたしました。
さらに、スケジュールの調整で重視したのは、経験的に遅れる業務や負荷がかかる業務は、できるだけ先の早い段階から着手するように前倒しを行い、決算全体の後半にできるだけ影響をさせないようにしました。
また、スケジュールを調整する中で、ひとつの気づきを得ました。
気づきとは、アローダイアグラムの手法を用いて、教科書的なクリティカルパスを計算するのが困難であるということでした。
アローダイアグラムは、作業の始点と終点を「ノード」(丸印)で表現し、ノードを矢印でつなぐことでプロジェクト全体の作業期間を見積っていきますが、決算の工程が、必ずしも作業のプロジェクトのスタートが一つではなく、また、ゴールまでが一本道でつながっているわけではないことです。
キリオが勤める会社の決算の工程数は、約40本ちかくあります。しかし、40すべてが数珠つなぎのように一本道につながってはいません。
決算の工程は、数珠つなぎのようになっている部分もありますが、大半はそれぞれ工程が独立し、あたかも決算の工程の全貌は、ゴールの頭に向かってイカの体のように道が複数あります。
複数ある足の部分から、それぞれで集まり最終的に頭にあつまるイメージです。
工程全体がイカの体をしていますので、足のひとつの部分がスタートだとすると、一番長い部分でクリティカルパスを考えればよいのかもしれません。
しかし、仮に一番長い部分でクリティカルパスを計算したところで、実態を表しているとはいえません。
アローダイアグラムによるクリティカルパスの把握に意味がないと言いたいのではありませんが、いざ実務で使おうと思ってなかなか難しいという印象でした。
ただし、アローダイアグラムによるクリティカルパスの把握方法を知らなくともよいかと言えばそういう訳ではなく、あくまで教科書的な知識として知っておくことは基礎を利用して、応用を考える意味で重要といえます。
スケジュール管理のツールとして、マイクロソフトPlannerを活用
今回の中間決算は、スケジュールの管理ツールとしてマイクロソフトのPlannerを活用することにしました。
一人ひとりの決算業務についてマイクロソフトPlannerでタスクカードに落とし込み、「完了基準」「前工程」「成果物」「作業時間目安」を「見える化」しました。
また、従来は、エクセルのガントチャートを手作業で更新していました。
しかし、エクセルのガントチャートの管理は煩雑であり、タスクが増えた場合や、イレギュラーな対応が必要な場合、変更の対応作業が大変でした。
また、エクセルのファイルは共有フォルダにあるため、閲覧にはいちいちファイルを開いて見なければなりません。
Plannerを活用すれ、ブラウザ上で都度決算の進捗を確認でき、リアルタイムでメンバーと共有できるようになりました。
また、決算スケジュールを組み立てる際にも、個人別の業務カレンダーが重宝いたしました。
Plannerにタスクと担当者を入れると、担当者ごとの個別の作業のカレンダーを作成できます。
担当者にとっては個人別のカレンダーの方が、全体のガントチャートのようなスケジュールを見せるよりも、理解しやすく好評でした。
個人別のカレンダーを用い、個人の制約条件を確認することで、個別のスケジュールの最適化を図ります。
一方、個別のスケジュールから全体のスケジュールへと往復しながら全体の決算スケジュールを検討でき、個別と全体で最適な計画を作ることが容易になりました。
さらに、一度Plannerにタスクと期限を登録すると、Plannerの方で自動的にリマインドメールを飛ばして副次的なメリットもありました。
いちいち、プロジェクトオーナーがエクセルのガントチャートとにらめっこしながらスケジュールの管理をせずとも、Plannerが自動的にリマインドメールを担当者に飛ばしてくれるので、心理的な負担も軽減されました。
「非上場企業など普通の会社で決算を早める5つの施策」のまとめ
この記事では、前回の期末決算の反省にもとづき、キリオが今回の中間決算に向けてどのような手をうってきたかのポイントを整理してきました。
再度、まとめますと、
- メンバーに向けてアンケートを行い、一人ひとりに対しインタビューを実施
- タスクカードを用いて、あらためてタスクの棚卸を行った
- 担当者で決算業務に偏りがあるため、負荷分散を検討した
- タスクカードを元に、スケジュールの最適化を検討
- スケジュール管理のツールとして、マイクロソフトPlannerを活用
以上の5点となります。
上記の施策が吉と出るか、凶と出るのか分かりませんが、決算を早くしたいと考えている経理マネージャーや担当者の方に少しでも参考になれば幸いです。
また、できれば今回の中間決算を進めた上での結果と振り返りお伝えできればと思います。
その際は、また是非よろしくお願いいたします。